「立ち上がる時に力が入りにくい」
「階段や坂道がつらくなってきた」
「歩くと疲れやすく、転びそうで不安がある」
このような症状がある場合、筋ジストロフィーという病気が関係していることがあります。
筋ジストロフィーは、筋肉の働きに関わる遺伝子の変化によって、筋力低下や筋萎縮が少しずつ進む病気の総称です。病型によって、症状の出方や進行の速さ、呼吸・心臓・飲み込みへの影響は異なります。
この記事では、筋ジストロフィーの特徴や生活で困りやすいこと、リハビリで大切なポイントについてわかりやすく解説します。
筋ジストロフィーとは?
筋ジストロフィーとは、筋肉を保つために必要な遺伝子やタンパク質の異常によって、筋肉が壊れやすくなり、筋力低下や筋萎縮が進んでいく病気の総称です。
「筋ジストロフィー」という1つの病気だけを指すのではなく、いくつかの病型を含みます。
代表的な病型には、
デュシェンヌ型筋ジストロフィー
ベッカー型筋ジストロフィー
肢帯型筋ジストロフィー
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー
筋強直性ジストロフィー
先天性筋ジストロフィー
などがあります。
病型によって、子どもの頃に症状が出る場合もあれば、成人になってから歩きにくさや疲れやすさに気づく場合もあります。
筋ジストロフィーでは、手足の筋力低下だけでなく、関節の硬さ、姿勢の崩れ、呼吸機能、心機能、飲み込みなどにも注意が必要です。
そのため、医療機関での定期的な評価と、生活に合わせたリハビリを継続していくことが大切です。
筋ジストロフィーで起こりやすい症状
■① 筋力低下・筋萎縮が少しずつ進む
筋ジストロフィーで中心となる症状は、筋力低下と筋萎縮です。
特に、
太もも
腰まわり
肩まわり
背中
首まわり
など、体を支える筋肉に力が入りにくくなることがあります。
そのため、
床から立ち上がりにくい
階段を上がりにくい
走りにくい
長く歩くと疲れる
物を持ち上げにくい
腕を上げにくい
といった困りごとにつながります。
成人の方では、「以前より疲れやすい」「階段を避けるようになった」「転びやすくなった」といった変化から気づくこともあります。
■② 立ち上がりや階段が大変になる
筋力低下が進むと、立ち上がりや階段昇降が難しくなることがあります。
特に、太ももやお尻まわりの筋肉が弱くなると、
椅子から立つ時に手を使う
床から立ち上がるのに時間がかかる
階段で手すりが必要になる
坂道で足が重く感じる
膝が不安定になる
といった状態がみられます。
筋肉の弱さを補うために、腰を反らせる、体を左右に揺らす、腕で体を支えるなど、動き方が変わることもあります。
無理に頑張り続けると転倒や疲労につながるため、早めに動作方法や環境を見直すことが大切です。
■③ 関節が硬くなり、姿勢が崩れやすくなる
筋ジストロフィーでは、筋力低下だけでなく、関節が硬くなる「拘縮」が起こることがあります。
特に、
足首
膝
股関節
肘
手首
肩
首
背中
などが硬くなると、立つ・歩く・座る・着替えるなどの動作がしにくくなります。
また、背骨や胸郭の変形が進むと、座った姿勢を保ちにくくなったり、呼吸がしにくくなったりすることがあります。
そのため、筋ジストロフィーのリハビリでは、筋力を強く鍛えることよりも、関節の動きを保つことや、姿勢を整えることが重要になります。
■④ 呼吸・心臓・飲み込みに影響することがある
筋ジストロフィーでは、手足の筋肉だけでなく、呼吸に関わる筋肉、心臓の筋肉、飲み込みに関わる筋肉に影響が出ることがあります。
例えば、
息切れしやすい
咳の力が弱い
痰を出しにくい
横になると息苦しい
食事中にむせる
体重が減る
動悸がある
疲れやすい
といった変化には注意が必要です。
呼吸や心臓の問題は、自覚症状が少ないまま進むこともあります。
「症状がないから大丈夫」と考えず、主治医のもとで定期的に検査を受けることが大切です。

生活で困りやすいこと
■① 立ち座りや移乗に時間がかかる
筋ジストロフィーでは、椅子から立つ、ベッドから起きる、床から立ち上がる、車へ乗り移るといった動作が大変になることがあります。
特に、
低い椅子
柔らかいソファ
低いベッド
床生活
和式の動作
は、体への負担が大きくなりやすい場面です。
座面を高くする、手すりを使う、ベッドや椅子の高さを調整するなど、環境を変えることで動作が楽になる場合があります。
■② 外出や通院が負担になる
歩きにくさや疲れやすさがあると、外出や通院が負担になりやすくなります。
駅やバス停まで歩く
長い廊下を移動する
人混みを歩く
坂道や階段を使う
駐車場から目的地まで移動する
といった場面で不安を感じることがあります。
外出を続けるためには、歩く距離を無理に伸ばすだけではなく、休憩場所、移動手段、車いすや歩行補助具の使用タイミングを考えることが大切です。
■③ 家事や仕事で疲れが残りやすい
筋ジストロフィーでは、同じ作業でも体への負担が大きくなりやすいことがあります。
例えば、
立ったまま料理をする
洗濯物を干す
掃除機をかける
買い物の荷物を持つ
長時間のデスクワークをする
通勤で歩く距離が長い
などです。
「できるから続ける」だけでは、疲労が蓄積して翌日の活動に影響することがあります。
作業を小分けにする、座って行う、道具を使う、家族やサービスに任せる部分を決めるなど、体力を温存する工夫が必要です。
■④ 介助量や家族の負担が増える
筋力低下や関節の硬さが進むと、家族の介助が必要になる場面が増えることがあります。
特に、
入浴
更衣
トイレ
車いすへの移乗
ベッド上での姿勢変更
外出時の移動
などは、本人だけでなく介助する側にも負担がかかりやすい動作です。
無理な介助を続けると、本人の転倒リスクだけでなく、家族の腰痛や疲労にもつながります。
安全な介助方法や福祉用具の使い方を早めに相談することが大切です。
治療とリハビリの考え方
筋ジストロフィーの治療は、病型や症状によって異なります。
一部の病型では薬物治療が行われることがあり、呼吸機能、心機能、整形外科的な問題、嚥下、栄養などに対しても、それぞれの状態に応じた治療や管理が行われます。
医療機関では、
遺伝子検査や病型診断
筋力や運動機能の評価
呼吸機能の評価
心電図や心エコーなど心機能の評価
側弯や関節拘縮の評価
嚥下や栄養状態の評価
装具や車いすの検討
などが行われます。
リハビリでは、病気そのものを治すというよりも、今ある身体機能をできるだけ保ち、生活しやすい方法を整えることが目的になります。
筋ジストロフィーでは、強い筋力トレーニングを行えばよいわけではありません。
高負荷の筋トレや、飛び降りる、勢いよく階段を下りる、急な坂道を走るなど、筋肉に強い負担がかかる運動は避ける必要があります。
一方で、動かない期間が長くなると、関節が硬くなったり、体力が落ちたり、生活範囲が狭くなったりします。
そのため、リハビリでは、無理なく続けられる運動量を見極めながら、生活に必要な動作を保つことが大切です。
筋ジストロフィーのリハビリで大切なこと
■① 高負荷を避けた運動量の調整
筋ジストロフィーでは、「筋力が弱いから強く鍛える」という考え方には注意が必要です。
筋肉に強い負荷をかけすぎると、筋肉を痛める可能性があります。
リハビリでは、
疲労が翌日に残らないか
筋肉痛が強く出ないか
息切れが強くないか
動作後に姿勢が崩れないか
日常生活に支障が出ないか
を確認しながら、運動量を調整します。
「頑張る運動」ではなく、生活を続けるための運動として、無理のない範囲で継続することが大切です。
■② 関節拘縮を予防するストレッチ
筋力低下が進むと、関節を十分に動かす機会が減り、足首や膝、股関節、肩などが硬くなりやすくなります。
関節が硬くなると、
立ち上がりにくい
歩幅が狭くなる
車いすに座りにくい
着替えがしにくい
介助が大変になる
といった問題につながります。
リハビリでは、痛みのない範囲でゆっくり関節を動かし、拘縮や変形を予防します。
本人が行うストレッチだけでなく、ご家族が安全にサポートする方法を確認することも大切です。
■③ 姿勢・座位・シーティングの調整
筋ジストロフィーでは、座っている姿勢が崩れやすくなることがあります。
姿勢が崩れると、
呼吸がしにくい
食事がしにくい
首や肩が疲れる
腰やお尻が痛い
手が使いにくい
車いすで疲れやすい
といった困りごとにつながります。
リハビリでは、椅子や車いすの座面、背もたれ、クッション、ヘッドサポート、足台などを確認し、楽に座れる姿勢を整えます。
「長く座れる姿勢」をつくることは、食事、会話、外出、作業、社会参加を続けるうえでも重要です。
■④ 装具・車いす・福祉用具の活用
筋ジストロフィーでは、歩行補助具や装具、車いすを使うことが「悪化のサイン」と受け止められることがあります。
しかし、適切な道具を使うことで、転倒を防ぎ、疲労を減らし、外出や活動の幅を保ちやすくなります。
例えば、
短距離は歩く
長距離は車いすを使う
足首の不安定さには装具を検討する
入浴にはシャワーチェアを使う
トイレには手すりや補高便座を使う
ベッドまわりには移乗しやすい環境を整える
など、生活場面に合わせて使い分けることが大切です。
道具を使う目的は「できないことを補う」だけではなく、「できることを長く続ける」ことです。
■⑤ 呼吸を守るためのリハビリ
筋ジストロフィーでは、呼吸に関わる筋肉が弱くなることがあります。
呼吸の力が弱くなると、
深く息を吸いにくい
咳が弱い
痰を出しにくい
風邪をこじらせやすい
夜間に呼吸が浅くなる
といった問題につながることがあります。
リハビリでは、姿勢の調整、胸郭の動きの確認、呼吸しやすい体位、咳を出しやすくする工夫などを行います。
痰が出しにくい、息苦しさがある、睡眠中の呼吸が気になる場合は、必ず医療機関に相談しましょう。
■⑥ 食事・飲み込み・手の使いやすさへの対応
筋ジストロフィーでは、病型や進行によって、飲み込みや手の使いにくさが問題になることがあります。
食事中にむせる、食べるのに時間がかかる、体重が減る、疲れて最後まで食べられないといった変化には注意が必要です。
また、手や腕の力が弱くなると、
箸やスプーンが使いにくい
コップを持ちにくい
パソコンやスマートフォンが使いにくい
書字が疲れる
着替えに時間がかかる
といった困りごとが出ることもあります。
リハビリでは、食事姿勢、食器の工夫、自助具、パソコンやスマートフォンの入力方法などを検討し、生活のしやすさを整えます。

自宅で気をつけたいポイント
■① 筋肉痛や強い疲労が残る運動は避ける
自宅で運動を行う場合は、翌日に疲労や筋肉痛が強く残らない範囲で行うことが大切です。
「頑張ればできる」運動でも、体への負担が大きすぎる場合があります。
運動後に、
強いだるさが残る
筋肉痛が長引く
歩きにくさが増える
息切れが強い
食欲が落ちる
といった変化がある場合は、内容を見直しましょう。
■② 床生活や低い椅子を見直す
床からの立ち上がりや低い椅子からの立ち上がりは、筋ジストロフィーの方にとって負担が大きい動作です。
自宅では、
椅子の高さを上げる
ベッドを使う
手すりを設置する
ソファを沈み込みにくいものにする
立ち上がりやすい位置に家具を配置する
などの工夫が役立ちます。
動作を楽にすることは、本人の自立だけでなく、介助するご家族の負担軽減にもつながります。
■③ 呼吸・体重・むせの変化を記録する
筋ジストロフィーでは、少しずつ変化が進むことがあります。
そのため、
息切れ
咳の弱さ
痰の出しにくさ
睡眠中の様子
食事中のむせ
体重の変化
動悸
疲れやすさ
転倒の回数
などを記録しておくと、医療機関やリハビリで相談しやすくなります。
特に呼吸や心臓の問題は、自覚しにくいこともあるため、定期的な受診と検査を続けることが大切です。
こんな時は専門家へ相談を
以下のような変化がある場合は、早めに相談しましょう。
立ち上がりに時間がかかるようになった
階段や坂道がつらくなった
転倒やつまずきが増えた
歩ける距離が短くなった
関節が硬くなってきた
座っている姿勢が崩れやすい
車いすや装具を検討したい
疲労が翌日まで残る
息切れしやすい
咳が弱く、痰が出しにくい
食事中にむせる
体重が減ってきた
動悸や胸の苦しさがある
家族の介助負担が増えてきた
筋ジストロフィーでは、歩行だけでなく、姿勢、呼吸、心臓、飲み込み、介助方法など、生活全体を見ながら対応していくことが大切です。
京都でリハビリを検討している方へ
エール神経リハビリセンター伏見では、
筋ジストロフィーによる筋力低下
立ち上がりや歩行の不安
関節拘縮の予防
姿勢や車いす座位の調整
転倒予防
疲労管理
装具・車いす・福祉用具の相談
自宅での生活動作の工夫
ご家族への介助方法の提案
などに対して、専門的なリハビリを行っています。
「最近、立ち上がりが大変になってきた」
「歩く距離が短くなってきた」
「無理のない運動方法を知りたい」
「今の状態に合ったリハビリを受けたい」
という方は、お気軽にご相談ください。
よくある質問
Q. 筋ジストロフィーとはどんな病気ですか?
A. 筋ジストロフィーは、筋肉の働きに関わる遺伝子の変化によって、筋力低下や筋萎縮が少しずつ進む病気の総称です。病型によって、症状の出方や進行の速さ、呼吸・心臓・飲み込みへの影響は異なります。
Q. 筋ジストロフィーでは筋トレをしてもよいですか?
A. 自己判断で強い筋力トレーニングを行うことはおすすめできません。高負荷の運動は筋肉に負担をかける可能性があります。運動を行う場合は、主治医やリハビリ専門職に相談し、疲労や筋肉痛が強く残らない範囲で行いましょう。
Q. 筋ジストロフィーでもリハビリは必要ですか?
A. はい。リハビリは、病気そのものを治すためではなく、関節の硬さを予防する、転倒を防ぐ、姿勢や呼吸を整える、生活動作を続けやすくするために大切です。状態に合わせて、早めに始めることが重要です。
まとめ
筋ジストロフィーは、
筋力低下が少しずつ進む
立ち上がりや階段が大変になる
関節が硬くなりやすい
姿勢が崩れやすい
呼吸や心臓、飲み込みに影響することがある
疲労や転倒に注意が必要
といった特徴がある病気です。
リハビリでは、
👉 高負荷の運動を避け、無理のない運動量に調整する
👉 関節拘縮を予防する
👉 姿勢や車いす座位を整える
👉 装具・車いす・福祉用具を上手に活用する
👉 呼吸や飲み込み、手の使いやすさにも目を向ける
ことが大切です。
筋力だけを見るのではなく、生活全体を見ながら、その人に合った方法で安心して暮らし続ける工夫をしていきましょう。
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