「足がつっぱって歩きにくい」
「歩幅が小さくなってきた」
「段差でつまずきやすい」
「長く歩くと足が疲れやすい」
このような症状がある場合、**遺伝性痙性対麻痺(HSP)**という病気が関係していることがあります。
遺伝性痙性対麻痺は、足の筋肉がこわばり、徐々に歩きにくさが進む神経疾患です。
症状の進み方には個人差がありますが、足のつっぱり、歩行障害、転倒、疲労、排尿の困りごとなどが生活に影響することがあります。
この記事では、遺伝性痙性対麻痺(HSP)の特徴や生活で困りやすいこと、リハビリで大切なポイントについてわかりやすく解説します。
遺伝性痙性対麻痺(HSP)とは?
遺伝性痙性対麻痺は、英語で Hereditary Spastic Paraplegia といい、略して HSP と呼ばれます。
HSPは、脳から脊髄を通って足へ運動の指令を伝える神経の経路に障害が起こることで、主に両足に症状が出る病気です。
「痙性」とは、筋肉の緊張が高くなり、こわばったり、つっぱったりする状態を指します。
「対麻痺」とは、主に両足に麻痺や動かしにくさが出る状態です。
そのため、遺伝性痙性対麻痺では、
足がつっぱる
足が前に出にくい
歩幅が小さくなる
つまずきやすい
歩く速度が遅くなる
長く歩くと疲れる
といった歩行の変化がみられます。
HSPには多くのタイプがあり、症状が足のつっぱりや歩行障害を中心とする「純粋型」と、感覚障害・小脳症状・末梢神経障害・認知機能の変化などを伴う「複合型」に分けられることがあります。
すべての方に同じ症状が出るわけではありません。
大切なのは、足のつっぱりだけを見るのではなく、歩き方、転倒リスク、疲労、排尿、生活環境まで含めて支援していくことです。

遺伝性痙性対麻痺で起こりやすい症状
■① 足のつっぱり・歩きにくさ
HSPで最も特徴的なのが、足のつっぱりと歩きにくさです。
足の筋肉がこわばることで、
足が前に出にくい
歩幅が小さくなる
すり足になる
足先が引っかかる
歩く速度が遅くなる
方向転換がしにくい
といった症状がみられます。
特に、歩き始め、狭い場所、方向転換、段差などで歩きにくさを感じることがあります。
「足が重い」
「思ったように足が出ない」
「急いで歩けない」
と表現される方もいます。
■② つまずきや転倒が増える
足のつっぱりや足先の上がりにくさがあると、転倒リスクが高くなります。
例えば、
段差でつまずく
階段が不安になる
方向転換でふらつく
人混みで歩きにくい
玄関や屋外で足が引っかかる
夜間トイレで転びそうになる
といった場面で注意が必要です。
転倒すると、骨折や外出への不安につながることがあります。
そのため、歩行状態を早めに確認し、転倒しにくい歩き方や環境を整えることが大切です。
■③ 足の疲れやすさ・筋力低下
HSPでは、足のこわばりに加えて、筋力低下や疲れやすさがみられることがあります。
例えば、
長く歩けない
長時間立っていられない
外出後に疲れが残る
坂道や階段がつらい
以前より歩く距離が短くなった
夕方になると足が動かしにくい
といった状態です。
歩きにくさがあると、必要以上に力を入れて歩くことが増え、疲労が強くなりやすくなります。
また、疲れることでさらに足がつっぱり、歩行が不安定になることもあります。
「動きすぎ」と「動かなさすぎ」の両方に注意し、その日の体調に合わせた活動量を考えることが大切です。
■④ 排尿障害や感覚の変化を伴うことがある
HSPでは、歩行障害だけでなく、排尿に関する困りごとがみられる場合があります。
例えば、
尿が近い
急にトイレに行きたくなる
夜間トイレが増える
残尿感がある
尿が出にくい
といった症状です。
また、足の感覚がわかりにくい、しびれる、振動がわかりにくいなどの感覚の変化を伴うこともあります。
排尿障害と歩行障害が重なると、トイレまで急いで移動しようとして転倒しやすくなります。
尿の悩みは相談しにくいこともありますが、生活の質に大きく関係するため、我慢せず医療機関や専門職に相談しましょう。
生活で困りやすいこと
■① 外出や買い物が大変になる
歩幅が小さくなったり、足がつっぱったりすると、外出が負担になりやすくなります。
特に、
駅やバス停まで歩く
買い物で店内を歩く
人混みを歩く
坂道を歩く
長い廊下を移動する
駐車場から目的地まで歩く
といった場面で不安を感じることがあります。
外出を続けるためには、無理に歩く距離を増やすだけではなく、休憩場所、移動手段、杖や歩行補助具の使い方を考えることが大切です。
■② 階段や段差が不安になる
HSPでは、足先が上がりにくくなったり、膝や股関節が動かしにくくなったりすることで、段差や階段が不安になりやすいです。
特に、
玄関の段差
階段
歩道の小さな段差
バスや電車の乗り降り
浴室のまたぎ動作
などは注意が必要です。
段差が不安になると、外出や自宅内の移動が制限されることがあります。
早めに手すり、段差解消、靴の見直しなどを検討しましょう。
■③ 夜間トイレが負担になる
排尿障害がある場合、夜間トイレが増えることがあります。
夜間は、
暗い
眠気がある
足がこわばっている
急いでトイレへ向かう
方向転換が多い
ため、転倒しやすい時間帯です。
足元灯、手すり、ベッドからトイレまでの動線整理などで、安全性を高めることが大切です。
■④ 疲労によって活動量が減る
足のつっぱりや歩きにくさがあると、少しの外出でも疲れやすくなることがあります。
疲労が強いと、
散歩をやめる
買い物を控える
趣味をあきらめる
家の中で過ごす時間が増える
体力が落ちる
といった悪循環につながることがあります。
大切なのは、無理をしすぎないことと、活動量を減らしすぎないことのバランスです。
治療とリハビリの考え方
HSPでは、医療機関での診断と経過観察が大切です。
診断では、症状の経過、神経学的な診察、画像検査、血液検査、神経の検査、遺伝子検査などが検討されることがあります。
現在のところ、HSPそのものを根本的に治す治療法は限られています。
そのため、治療では、
足のつっぱりに対する薬物療法
痙縮に対する治療
リハビリテーション
装具や歩行補助具の活用
排尿障害への対応
生活環境の調整
などを組み合わせていきます。
リハビリでは、病気そのものを治すというよりも、歩きやすさを保ち、転倒を防ぎ、生活動作を続けやすくすることを目指します。
足のつっぱりがあるからといって、無理に強く伸ばしたり、無理な筋力トレーニングを行ったりすることはおすすめできません。
その人の症状に合わせて、関節の動き、筋力、バランス、歩き方、疲労、生活環境を確認しながら進めることが大切です。

遺伝性痙性対麻痺のリハビリで大切なこと
■① 足のつっぱりに対するストレッチ
HSPでは、足の筋肉がこわばりやすく、関節の動きが硬くなりやすいです。
特に、
ふくらはぎ
太ももの裏
股関節まわり
足首
膝まわり
の柔軟性を保つことが大切です。
ストレッチは、痛みを我慢して強く伸ばすのではなく、無理のない範囲でゆっくり行います。
筋肉のつっぱりが強い時は、呼吸を止めず、反動をつけずに行うことが大切です。
■② 歩行状態の確認と歩き方の練習
HSPでは、足のつっぱりによって歩き方に特徴が出ることがあります。
リハビリでは、
足先が引っかからないか
歩幅が小さくなっていないか
膝が伸びすぎていないか
体が左右に揺れていないか
方向転換でふらつかないか
疲れると歩き方が崩れないか
を確認します。
歩行練習では、ただ長い距離を歩くのではなく、安全に歩ける方法を身につけることが大切です。
必要に応じて、杖、歩行器、装具などの使用も検討します。
■③ バランス練習・方向転換の練習
転倒を防ぐためには、バランス練習も重要です。
例えば、
立ち上がり
立位保持
重心移動
方向転換
段差昇降
狭い場所での移動
などを練習します。
HSPでは、まっすぐ歩くよりも、方向転換や段差で不安定になることがあります。
実際の生活場面に近い練習を行うことで、転倒予防につながります。
■④ 装具や歩行補助具を活用する
足先が上がりにくい、膝が不安定、長距離歩行で疲れやすいといった場合は、装具や歩行補助具が役立つことがあります。
例えば、
杖
歩行器
短下肢装具
手すり
滑りにくい靴
などです。
道具を使うことは、「歩けなくなった」という意味ではありません。
転倒を防ぎ、疲労を減らし、安全に歩くための選択肢です。
適切なタイミングで使うことで、活動範囲を保ちやすくなります。
■⑤ 排尿の困りごとに合わせた生活動作の工夫
排尿障害がある場合は、トイレまでの移動や夜間動作を含めて考える必要があります。
リハビリでは、
トイレまでの動線
夜間の足元灯
立ち座りの安全性
方向転換
手すりの位置
衣服の上げ下ろし
外出時のトイレ計画
などを確認します。
トイレの不安を減らすことで、外出や睡眠、日常生活の安心感につながります。
■⑥ 疲労管理と活動量の調整
HSPでは、足のつっぱりや歩きにくさによって疲労が強くなることがあります。
リハビリでは、
疲れやすい時間帯
疲れが出やすい動作
外出後の疲れ方
休憩のタイミング
歩く距離の調整
家事や仕事の負担
を一緒に確認します。
「できるから続ける」だけでは、疲労がたまり、翌日の活動に影響することがあります。
活動と休息のバランスを整え、無理なく生活を続けることが大切です。
自宅で気をつけたいポイント
■① つまずきやすい場所を片づける
自宅では、次のような場所を確認しましょう。
玄関
廊下
階段
トイレ
浴室
ベッドまわり
夜間の移動経路
床に物があると、足が引っかかりやすくなります。
カーペットの端、電気コード、段差などにも注意しましょう。
■② 夜間は足元を明るくする
夜間トイレでは、暗さと眠気が重なり、転倒しやすくなります。
足元灯を使う、トイレまでの動線を片づける、必要に応じて手すりを設置するなど、安全に移動できる環境を整えましょう。
■③ 疲れを翌日に残しすぎない
散歩や外出、家事の後に強い疲労が残る場合は、活動量が多すぎる可能性があります。
休憩を先に予定に入れる、歩く距離を調整する、疲れやすい動作を分けるなど、生活全体のバランスを整えましょう。
こんな時は専門家へ相談を
以下のような変化がある場合は、早めに相談しましょう。
足のつっぱりが強くなった
歩く速度が遅くなった
歩幅が小さくなった
足先が引っかかる
転倒やつまずきが増えた
階段や段差が不安になった
長く歩けなくなった
外出が減った
夜間トイレで転びそうになる
尿が近い、残尿感がある
杖や装具を検討したい
家族の介助が増えてきた
早めに相談することで、転倒を防ぎ、生活のしやすさを保ちやすくなります。
京都でリハビリを検討している方へ
エール神経リハビリセンター伏見では、神経難病、脳卒中後遺症、脊髄疾患の方を対象に、症状や生活環境に合わせたリハビリを行っています。
遺伝性痙性対麻痺の方に対しては、
足のつっぱりへの対応
歩行状態の確認
ストレッチ
バランス練習
転倒予防
装具や歩行補助具の相談
排尿障害に配慮した生活動作の工夫
自宅環境の見直し
などを行います。
「歩きにくさが進んできた」
「転倒が不安」
「足のつっぱりに合ったリハビリを受けたい」
「今の状態に合った歩き方や道具を相談したい」
という方は、お気軽にご相談ください。
当院では【特別体験】も実施しています。
まずは現在のお身体の状態を確認し、生活の中で何に困っているのか、どのようなリハビリが合っているのかを一緒に考えていきます。
よくある質問
Q. 遺伝性痙性対麻痺(HSP)とはどんな病気ですか?
A. 遺伝性痙性対麻痺は、主に両足のつっぱりや歩きにくさが徐々に進む神経疾患です。症状の出方や進行の速さには個人差があります。
Q. HSPではリハビリが必要ですか?
A. はい。リハビリは、足のつっぱりをやわらげる、歩きやすさを保つ、転倒を防ぐ、生活動作を続けやすくするために大切です。
Q. 杖や装具は早めに使った方がよいですか?
A. 必要な時期に適切に使うことで、転倒予防や疲労軽減につながることがあります。自己判断ではなく、医師やリハビリ専門職に相談して検討しましょう。
まとめ
遺伝性痙性対麻痺(HSP)は、
足のつっぱりがみられる
歩幅が小さくなりやすい
つまずきや転倒が増えることがある
長く歩くと疲れやすい
排尿障害を伴うことがある
生活環境の工夫が大切になる
といった特徴がある病気です。
リハビリでは、
👉 足のつっぱりに対するストレッチを行う
👉 歩行状態を確認する
👉 バランス練習や方向転換の練習を行う
👉 装具や歩行補助具を上手に活用する
👉 排尿の困りごとに合わせて生活動作を工夫する
👉 疲労管理と活動量の調整を行う
ことが大切です。
HSPでは、足のつっぱりだけでなく、転倒、疲労、排尿、生活環境まで含めて、その人に合った方法を考えていくことが重要です。
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